パリに来て2か月もすると、私はなんだか毎日メトロに乗って移動するのにうんざりしてしまっていた。地下鉄は暗いし、汚いし、それに乗っている人の顔がとても暗いので、なんだかどんどんエネルギーを吸い取られて行くような気がしたのだ。
そこでなるべくメトロを避け、バスでの移動を心がけるようにしたところ、随分と精神的に楽になった。ただ、バスはメトロに比べて本数が少なく、ピークの時間は+20分くらい平気で余計に時間がかかるので、急いでいるとやはりメトロを使わざるを得ない。暗い地下で長く過ごしていると、人間暗くなってしまうものだとつくづく感じた。
カリフォルニアの毎日変わらない日差しを浴びていた頃と比べると、日照時間が極めて少なくなったのも、気持ちが暗くなる原因ではないかと思う。
カリフォルニアの毎日変わらない日差しを浴びていた頃と比べると、日照時間が極めて少なくなったのも、気持ちが暗くなる原因ではないかと思う。
そこでやっと理解し始めた、フランスのバカンス天国。
フランス人が意地になってバカンスに命をかけることは知られている。半分は見栄で、私はここに行った、と世間に自慢するためであるらしい。
確かに8月のしーんとしたパリに一人残って夏中どこにも行かなければ
自分がバカンスにも行けない負け犬のような気になってくるのかもしれない。
やはり見栄の他にも、やはりこのパリのあくせくした毎日と、人ごみと、車の排気ガスとじめじめとして空気から抜け出すためには、バカンスにいかなくてはならないのだ、と私は理解し始めた。
そして私も。。
そして私も。。
カンヌ、アンティーブ、ニース、モナコの辺りに一か月ほど滞在した。
南フランスはパリに比べてなんとおおらかで、空と海がきれいなことか。
私はパリにしばらく滞在のあと南フランスに来て、初めてこのフランスのバカンス文化を少しだけ理解できたような気になった。
パリと南フランスがあまりに違いすぎる。
パリに仕事で住まなくてはならない人たちにとって、この 夏の間の逃避期間はないと死んでしまうくらい大切なものなのかもしれない、とばかみたいにバカンスの話ばかりするフランスのバカンス文化が少しだけ理解できたような気がした。